2022年11月15日火曜日

バイエルンの狭い攻撃について

以前、バルセロナの特徴がピッチを幅広く使う布陣にあるということを話した。

バルセロナの戦術2022 サイドバックの開き具合

今回はその真逆、狭くピッチを使うクラブの話。面白いことに、それは、バルセロナの宿敵といえる、よりに直截に言うと、バルサキラーである、バルセロナの悪夢ことあのバイエルンの話。

2022-23年度のブンデスリーガ開幕後の数試合、バイエルンがむちゃくちゃ点を取って勝っていた試合があった。そのとき、バイエルンがしていたのが狭い幅の展開での試合。


これはJスポーツ+のブンデスについての番組から録ってきた画像だが、赤のバイヤンの選手が真ん中に固まっていることがわかると思う。

これの何がいいかというと、白の選手が無駄に外にいて、バイヤンが中を攻めてくるのに対応できない点だ。真ん中で数的優位を作って突破という、ちょっと普通は思いつかないし、やらないことを世界的なクラブがやっていることに私は衝撃を受けた。しかもこのバイヤンはボールロストしたあと、ものすごい速いリターンでボールを取り返しにくる。攻守の切り替えと言うレベルではなく、パスとプレスでの奪還が同じものというくらいのシームレスな攻守の移動。それでこのバイヤンはむちゃくちゃ強かった。W杯でもこれをやったらいいのでは、という話もあったくらいだ。

このブログの本来の趣旨であるフォーメーションという話題に立ち返ると、これは4-1-2-1-2を思い出せる布陣だ。ウイングに選手をおかない中央固めの戦術。たぶんこれ最近のFMでもそこそこ有効だと思う。

プレスも効果的だし、ボールも回る。相手のサイドバックがあがってきたときに守備できないけれど、それはFW二枚を戻らせて対応させればよい的なことを9年前に書いた。FWが戻るかどうかはわからないが、2022年のバイエルンの戦い方は、このフォメがなぜ強いのかの説明にもなっていると思った。

ところがだ。勝ちまくっていたその数試合後、バイヤンは突然勝てなくなった。なぜかというと、相手が対策してきたからだ。その対策とはマンマーク。要するに、無駄にピッチの幅を広く布陣すると中央をバイヤンにやられるのだから、バイヤンに合わせてマンマークで守備をすればいいという話。これでバイヤンはまったく勝てなくなった。

この話、なにがすごいかと言うと、ブンデスリーガの対応力だ。王者バイエルンだろうとなんだろうと、相手が戦術で勝ってるんだったら、こちらも戦術の対策をすれば対応はできる、という信念をたぶんどの監督も持っている。これはFMやってる人ならわかると思う。戦術には戦術で勝てる。局面で個人対個人になっちゃうと戦術では勝てないが、相手の戦術がすごいならこちらも戦術を用意すればいい。

バイエルンのこの戦術への対策がマンマークだったということ、そのことにも驚いた。マンマークなんて、一世代前の戦術で、FMでもいまだにこの戦術のオプションが用意されていて、使えるのかと思って使ってみると選手の立ち位置が少しずれておかしくなるので全然使えないという戦術なのだ。まあ、それといまリアルでやっているマンマークは同じではないかもしれないが、それでもそんな古い戦術がいまでも場合によっては、しかも世界のトップレベルで有効だということに衝撃を受けた。サッカーというのは本当に奥が深い。

ところで、もしもうすぐ開幕するW杯でドイツ代表のフリック監督が日本相手にこのバイエルンの狭い中央戦術を取ってきたらどうなるだろうか。森保監督が瞬時にマンマークに移行するように選手に指示できるだろうか。まあ、ないとは思うけど、もしそんな展開になったらゲームみたいで面白いかもしれない。

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