シャビは言う「サッカー選手に大切なのは肉体じゃない、頭脳だ!」[18]。 試合中、頻繁に首をすばやく横方向に振って周囲を確認する[18]。一試合平均で五百数十回も首を左右に振って周囲を確認している[18]。首を横に振って状況を確認して首を元の位置に戻すのにかけるのはわずか0.5秒程度[18]。たとえば、次のように首を振る。近くにいる選手にパスが渡った瞬間にすでに一度一瞬首を左に振り左側の状況を確認。次にその選手が自分にパスするためにボールを蹴った瞬間に右側に首を振り右側の状況を確認し、ボールを受け即座に次にパスする[18]。シャビは言う「私にはピッチ上の全てが見えている」[18]。 シャビのピッチ上の状況把握力を確かめるために、ある位置から見た(ある視点から見た主観的な)画像を一瞬見て、ピッチを再現するボード(ピッチを上から見た図)に選手の位置を○印や×印で再現するというテスト(作業)をさせてみると、一般的なスペインリーグの選手が20人の選手のうち6人しか位置を正確に再現できないのに対して、シャビは20人のうち16人の位置を正確に配置できた[18]。つまり、シャビの頭脳ではピッチ上の敵・味方の選手たちの配置が、他のサッカー選手と比べものにならないほど正確に把握されているのである[18]。また、シャビの頭脳の活動を測定してみると、プレー中、大脳基底核が動いている。比較として、日本の一般的なサッカー選手の頭脳の働きを調べてみると、大脳前頭前野がもっぱら働いている[18]。(大脳前頭前野が働いているというということは、まだ(いちいち)「理屈で考えている」ということである[18]。)一方、シャビの頭脳で主に働いている大脳基底核について解説すると、大脳基底核には過去の経験が蓄積されている、と考えられている[18]。大脳基底核は、無意識下に動いているので、本人には思考しているという感覚は無い[18]。つまり、シャビは膨大な経験に裏付けられた「直感」によってプレーしているのである[18]。ちょうど天才的なプロ棋士が無数の棋譜を憶えていて、その中から理屈を超えて直感的に次の手を選ぶように、シャビは無数のパターンを記憶していて直感的に適切な一手を選んでいるのである[18]。スペインにはプロ選手を養成するための特別なジュニアクラブがある(そしてそこでの練習は一般には公開しておらず秘密にされている)が、そこでは、子供たちに頭を使うサッカーのトレーニングをさせている[18]。例えばパスの練習ひとつをとっても、円形にジュニアを配置し相互にパスのトレーニングをする方法を行う場合でも、それぞれの子には、パスを受ける前に、もしボールを受けたら誰にパスをするのかあらかじめ幾通りにもイメージさせるようにし、そうしたトレーニングを日々毎日繰り返している[18]。決して、自分がパスを受けて持ってしまってから「次に誰にパスしようか?」などと考えるのではないのである[18]。まだパスが来ていないうちから、幾通りにも、自分にパスが来るパターンを思い描き、また自分がパスを受けた場合に誰に、どのようにパスするかについても幾通りにも思い描いているのである。こうすることで、スペインのジュニア選手ではサッカーのための頭脳が鍛えられているのである
シャビにはピッチ上の全選手が見えており、各選手やボールの動きが数手先まで見えており(予見しており)、ボールの通る場所にあらかじめ行くことができるので、敵のパスボールがあたかもシャビのところに吸い寄せられるようにシャビのものになる。無理矢理追いかけて奪い取っているというよりも、あらかじめボールの行き先が見えていてその場所に行っているのである。
相手のマークを一瞬で外す瞬発力、受けたボールをシンプルかつ的確にさばく状況判断力や高いパス技術など、洗練されたスキルを持つ世界最高の司令塔の一人。ボールキープ、ポジショニング、パスセンス、キックの精度、視野の広さ、どれもが世界最高クラスと言われ、それゆえ常にピッチ上で戦略の要となる。僅かなすきを見つけては針の穴を通すようにボールを送り、攻撃を加速させるスルーパスは圧巻の一言。常に相手DFの逆を突く意識でピッチを動き、ボールを奪われる場面など皆無に等しい。また、味方からパスを引き出す能力も高い。結果として、ポゼッション(ボール支配率)の高いサッカーを実現している。敵選手はボールを奪えないことが多いのだ。それどころか、敵選手はボールに触れることすらできないことも多い。例えば味方同士で13回パスを行い、相手に一度も触れさせることもなくゴールする、ということも行う。(ブラジルのサッカーにあるような、独りの選手が自分だけでボールを保持して長距離ゴール前まで走りつづけ、独りでゴールしてしまおうというサッカーとは根本的に異なる) シャヴィはこうしたサッカーの要の役を果たしている。スペイン語で「ティキ・タカ」と呼ばれている「パスの細かな連携によって組み立てるサッカー」「パスを受けると同時に次にパスすることを繰り返すことで組み立てるサッカー」では欠かせない存在。ルーズボールへの対応にも秀でており、重要な局面でこぼれ球からの得点をいくつも重ねている。テクニック面が注目されがちだが、スタミナやけがの耐性にも優れている。また守備能力にも優れており、「相手からボールを奪い取る技術にも長けている」と考えられている。
18 NHK『もっと知りたい!ミラクルボディー』「サッカーW杯・スペイン編~FIFAワールドカップ直前!優勝候補のスペイン」シャビとイニエスタ 2014年6月10日(火) 21:00~21:50 放送
注18はNHKで流された番組。これはこことここで見ることができる。
面白いと思ったのは、シャビは前頭前皮質ではなくて大脳基底核を使ってプレーしているというところ。脳のなかでもより原始的な大脳基底核を使うということは、記事にある通り、経験を基盤とした「考えない」プレーをしているということになる。それは「体で覚えた」プレーであって、一回一回考えるプレーではない。
すでに同じことを、ブラジルサッカーと現代の欧州サッカーの違いという話題で記事にしたが、その証拠となるような科学的分析がすでにあったことになる。試合見ていて分かるといえば分かることなのだが、Jリーグの選手とシャビのプレーでは、使っている脳からして違うのだ。そしてその違いは、子供の頃からの訓練の違いの積み重ねにほかならない。
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