Jリーグの守備はザルである。とはいえ、試合を通してみたら、それなりにゾーンディフェンスを敷いて守ってはいる。が、セットプレイからの得点は除いて、得点/失点シーンは必ず守備のミスから生まれている。
なぜJでは守備をきちっとしないのか。その理由はこないだ試合を見ていて理解した。Jでは、決定率がとんでもなく低い印象を受ける。どフリーでシュートを打っても、ほとんど枠内に行かない。なので、多少相手にシュートを打たせても全然OKなのだ。
この印象は正しいだろうか?
データを見てみよう。枠内シュート率がなかったので、決定率をあげる。これは2014年9月27日時点のJ1の得点数順の決定率。
()はシュート数-決定率
1位 15 大久保嘉人(73-20%)
2位 13 ペドロジュニオール(48-27%)
3位 11 武藤嘉紀(42-26%)
3位 11 マルキーニョス(63-18%)
3位 11 豊田陽平(55-20%)
6位 10 エドゥー(39-26%)
6位 10 ダヴィ(88-11%)
6位 10 小林悠(50-20%)
6位 10 興梠慎三(34-29%)
6位 10 ノヴァコヴィッチ(52-19%)
http://www.55ft.co/2014/10/j12.html
より。
これを見ると、上位はだいたい20パー以上かそれに近い数値があることがわかる。決定率20パーというのは十分な数値だ。というか、FWに20パーの決定力があればすごいことだ。
これは欧州五代リーグの点取り屋のゴール数と決定率をチャートにしたもの。決定率の平均は21.4パーだ。ちなみにメッシは21-22くらい、クリロナは14パーくらい(クリロナのは
ほかのサイトのデータを見た)。サイドの選手で決定率14パーっていうのは悪くないだろう。
これを念頭に置いたうえで、今度はJのデータを見よう。いま首位の浦和の成績だ。
数値は2014年9月27日時点
浦和レッズ 44得点21失点
(ゴール数-シュート数-決定率)
全体 42 287 15%
興梠慎三 10 34 29%
李 忠成 5 29 17%
梅崎 司 4 36 11%
原口元気 4 43 9%
阿部勇樹 3 17 18%
宇賀神 3 24 13%
森脇良太 3 19 16%
槙野智章 3 34 9%
柏木陽介 2 30 7%
那須大亮 2 9 22%
関根貴大 1 7 14%
鈴木啓太 1 3 33%
平川忠亮 1 2 50%
2ゴール以上あげている選手のなかで、決定率が20パー以上の選手は興梠慎三だけ。シュート数順に並べ直すとこうなる
原口元気 4 43 9%
梅崎 司 4 36 11%
興梠慎三 10 34 29%
槙野智章 3 34 9%
柏木陽介 2 30 7%
李 忠成 5 29 17%
これ、対戦相手もこのデータを知っているわけだ。すると、浦和でマークすべきなのは李忠成と興梠慎三だけで、あとはシュートを打たせておいてもまあ点は取られない、ということが事前にわかるわけだ。なんせ、決定率が低いからね。これは、シュートがそもそも枠に飛ばないからだ。10回に一回しか入らないわけだから、五本くらいならどフリーで打たせても問題ない、と思ってしまうのかもしれない。そして、実際Jでは、選手がどフリーでも外す外す。
ガンバ大阪 47得点25失点
(ゴール数-シュート数-決定率)
全体 47 269 17%
宇佐美貴史 8 43 19%
阿部浩之 7 48 15%
パトリック 7 28 25%
遠藤保仁 5 25 20%
倉田 秋 5 33 15%
リンス 4 31 13%
大森晃太郎 3 10 30%
丹羽大輝 2 4 50%
今野泰幸 2 11 18%
二川孝広 1 8 13%
佐藤晃大 1 15 7%
西野貴治 1 5 20%
岩下敬輔 1 8 13%
同じくhttp://www.55ft.co/2014/10/j12.html
より。
ガンバは誰もがかなり決定率が高い。これが快進撃の理由だろう。サッカーってのは点を取らないと勝てないのだから、決定率が高い選手が多いチームが勝つ。
さて、今季J1前半戦のシュート数は3130に対し、ゴール数は367。つまり、リーグ全体での決定率は11.6パーセント。
データは
https://twitter.com/football_lab/status/494786631073673218
より
2012年のデータを見ると、シュート数は6718に対しゴール数は855で決定率は12.72パーセントだから、決定率はだいたいいつも11-12パーセント台なわけだ。
これ、普通じゃないか? 数値で見ると、Jは決定率がそれほど低いわけではない。残念ながらほかのリーグのシュート数のデータが見つからなかったので数値での比較はできないが、どこもだいたい10パーセントくらいだと思う。
あるデータでは、あるシーズンのレアル・マドリーが決定率16パーで、バルサが12パーというのがあるが、こういうチームと比較してもあまり参考にはならないだろう。
が、2010年のデータだが、枠内シュート率については、ほかのリーグと比較できる。J1の枠内シュート率は36.42%に対し、プレミアが30.90パーセント。これはつまり、プレミアよりJ1のほうが枠内率が高い。
http://llabtooflatot.blog102.fc2.com/blog-entry-2248.html
完全に印象と逆の結果が出た。しかし、プレミアは、シューターがどフリーのときのシュートをJ1ほどは外してない。逆に、ミドルシュートがばんばん決まる。これ、数値はあまり意味が無いように思える。
というのも、見たところ、Jではあまりシュートを打たない。逆に、欧州ではシュートを撃ちまくる。Jでは、セットプレイ時を除いて、シューターがどフリーになったときにしかシュートを撃っていないように思える。逆に、欧州ではどフリーでなくてもシュートをうち、それがけっこう決まる。この差は、見ていればかなりはっきり分かる差だ。
J1の枠内シュート率36パーというのは、シューターがどフリーのときにシュートを打って、三回に一回しか枠に飛ばない、ということだと思う。さらに、決定率は11-2パーなので、枠に飛んだうち三回に一回しか決まらない。これが、実際にJ1の試合を見ていて感じることに合致すると思う。
逆に、欧州の試合では、シューターがどフリーのときにもっと高い確率で枠に飛んでいるはずだ。フリーっつてもクロスからのシュートを外すのはよくある。しかし、Jでよくある、真ん中からどフリーで抜けてシュートする場合、枠内率は50パー以上はあるだろう。というか、そういうレベルの試合でないと、そもそもお客が見ない。
Jでは、結局真ん中の絶好の位置からどフリーでシュートを打っても三回に一回しか枠に飛ばないので、守備が甘くなる。考えてもみてほしい。相手が決定的なチャンスでも10回に一回しか決められないわけだから、守備する気が起きないのも当然かもしれない。
逆に、欧州のトップの試合で、どフリーでペナエリアの真ん中からシュートを選手がうっている場合、50パーセント以上は決まっている。それ以外のゴールは、もっと難しいシュートから決まっている。だからこそゴールが決まった時にすごいと思えるわけだ。が、Jのゴールは、決まって当たり前のものを外して外して外しまくったあげくにようやく決まるものだ。これでカタルシスを感じろというのは無理だろう。というか、Jの試合を見ている人はストレスたまらないのかな。