2018年6月22日金曜日

W杯初戦GLで日本がコロンビアに勝った

W杯初戦GLで日本がコロンビアに勝った。PAL-9999さんは「開始3分のレッドカード+PKで事実上試合が決まった」と書いている。客観的に見ればそうかもしれないが、四年前の日本代表のイメージをいまだに引きずっている身としては、オシムの「日本は相手の退場で勝ったのではない」という言葉のほうがスっとくる。

実際、相手が一人少なくなってからの日本の戦い方は、見事だったと言っていい。前半3分にコロンビアの選手がレッドカードを受けてPKを得て、一点リードして残り87分を戦ったわけだが、前半終了間際に相手FKから追いつかれてしまったとはいえ、後半は持ち直して、リスクを取って攻めに出て、CKから再びリードしたあとの戦い方もうまかった。この日は、状況に応じた戦い方というのを日本代表がついに覚えたことを示した歴史的な日だった。

というのも、今まで日本代表はリードしてからの戦い方がまあ下手だった。2006年W杯のオーストラリア戦は言うに及ばず、2013年コンフェデのイタリア戦などは、前半2点リードしたにも関わらず追いつかれて3-4で負けた。2014年W杯ではコートジボワールに先制しながらも後半に逆転されて負けた。

サッカーというのは、先制した方が圧倒的に有利になるゲームだ。普通はリードしたほうが主導権を握ることができるからだ。逆に、相手にリードされたのを逆転するのは難しい。

FMをやっているとこれはすごく感じる。弱いチームを率いていて勝てるのは、幸運にもこちらが先制したときだ。逆にいえば、相手よりこちらが弱いチームなのに、さらに先制されるとよほどのことをしないと勝てない。これが強いチームを率いると、たまたま相手に先制されても逆転できるようになる。

今までの日本代表は、先制しても負けるというパターンが多かった。そして当然逆転もない。これでは勝てるわけがない。先制しても負けるのは、得点に応じて試合運びを変えることができなかったからだ。とくに2006年のオーストラリア戦では、選手同士の意思疎通がうまくいかなくて負けた。監督がジーコだったっていうのもあるが。

それが今回は、相手が一人少なくなっていたとはいえ、攻めるときは攻め、保持するときは保持する、そういうゲーム運びができていた。こんなのFMやってれば初歩の初歩なのだが、言うは易し行うは難し。ついにそれを日本代表が自分の技術として手に入れた。この意味は大きい。

臨機応変のゲーム運びだけではなく、技術的にも十分だった。相手が一人少なかったから控えめに見積もらないといけないとはいえ、日本の選手はうまかったし運動量があった。守備時には事前に危険を察知して相手のチャンスをほとんど潰していたし、攻撃時にもボール回しや動きがよかった。

例えば次の動画を見てほしい。



ボールを動かすことで相手を動かし、そこでできたスペースを使って攻撃するという日本の動き。これは高度に組織化されていて、ミスもない。これだけ見ると日本がまるで世界の強豪のように見える。実際、シュート精度以外は日本はそこそこいいチームだ。前回と違い、事前準備もよかったのだろう。選手の体も前半からよく動いていた。

もちろん、細かく見ていくとダメなところもあるのだが、それはどんな国のどんな選手にもある。日本はコロンビア戦に限って言えば、間違いなく素晴らしかった。

あと、審判もよかった。相手の得点につながったファルカオのファールはミスジャッジだが、それ以外はコロンビアを特に贔屓したジャッジをしなかった。2014年のギリシャ戦の審判ジョエル・アギラールは、ギリシャを一人退場させたあとはギリシャのファールを絶対に取らなくなった。あれは結構大きかった。ちなみに、この審判は今回も参加している。

今回でも、ポルトガルvsモロッコ戦のマーク・ガイガー審判は、明らかにポルトガル寄りのジャッジをしていて、試合を私物化していた。日本もいつそういう審判に当たるかはわからない。

さて今回の結果に話を戻すと、結局、監督解任が良い方に動いたということなのだろう。前回のエントリーと矛盾するが、ことここに至ってはそうとしか思えない。監督解任によって、選手が一体になったようだ。実際、選手たちは自分たちで何度もミーティングを開いて、試合のいろんな状況を想像してその時の対策を考えていたらしい。ピッチ上でも選手みなが一体となって戦っていた。

協会の人間は間違いなくクソだが、西野監督に責任はない。西野監督もいまここで自分に課された役割がよくわかっていたのだろう。選手たちをいい雰囲気にしてうまくまとめることをした。さすが年齢を重ねた男は違う。

試合の後、とくに香川がホッとした表情をし、インタビューでもそんなことを言っていたのが印象的だった。実際、ここで負けて帰ってきたらどれだけボロクソに言われたことだろうか。そのプレッシャーがあったのは間違いない。

ただこの勝利で、ハリル解任の真相は今後20年は表に出てこなくなっただろう。ハリルを解任させた主な勢力は協会だったのか、スポンサーだったのか、それとも選手だったのか、それが話されるのはかなり後になるだろう。もし正解が3「選手が首謀者」の場合、今回負けていれば、W杯後必ず協会からリークされただろうから。自分らへの批判をかわすために。もし正解が1「首謀者は協会」の場合、今回負けていれば選手がリークしたはずだ。もし正解が2「スポンサーが首謀者」の場合は誰もリークしない。だが今回勝ったので、真相は誰も気にしないし、有耶無耶になる。それはいいことでもあるし、悪いことでもある。

ハリル解任に関する考察はこのブログが詳しい。

さて、次のセネガル戦は難しい。ポーランドを一蹴したセネガルはとにかく守備がよかった。以前アフリカのチームは規律がなくムラがある、というのが定番の評価だったが、いまは違う。育成所には欧州トップで学んできたコーチがいて、最先端の戦術と技術を教えているらしい。選手も多くは欧州トップに所属している。

ポーランド戦はセネガルがやったような戦いを日本がうまく真似ることができればきっと勝てる。そこまで原口の体力が残っているかどうかが勝負の分かれ目になると思う。

現時点でのグループHの展望を言えば、コロンビアはもう自信を失ったのでGLはきっと突破できない。残り2試合とも負けるかもしれない。1勝のセネガルは残りの日本とコロンビアに勝って全勝で突破が見えている。1敗のポーランドはコロンビアには必ず勝って、日本相手にも引き分け以上でワンチャンある。

それにしても、今大会はGLの初顔合わせから波乱含みで面白い。ドイツはメキシコの完璧な分析とゲームプランによって破れ、アルゼンチンは2002年のアイルランドを思い出させるようなアイスランド相手に勝ちきれず、ブラジルもスイスと引き分けた。スペインとポルトガルの最高の試合もあった。開催国のロシアも運動量があり、かなり強い。

同じアジア勢のイランも堅守のいいチームだし、オーストラリアも勝ち点1は取った。サウジも開幕戦でボロ負けしたが、ウルグアイ戦では立て直していい試合をした。前回アジア勢は1勝もできなかったことを考えると上出来だ。

日本はもしグループHを突破できれば、当たるのはイングランドかベルギーになる。どちらも強いチームだが、ロシアと当たるよりはいい。

優勝はどこかまったくわからないが、ドイツは弱点がもろにさらされたのでない。というかドイツはGL突破できるか怪しい。アルゼンチンもない。ブラジル、ベルギー、フランスあたりが3強と言えて、次点がスペイン、ロシア、セネガル、メキシコあたりか。面白くなってきた。

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